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ED後の設定なのでほんのりネタばれ注意です。
よろしければつづきからどうぞ
『俺は、最後までバカであることを貫く』
この時、もうあいつに惹かれていたのかもしれない。
<夢のうつつ>
天下分け目の戦いは終わった。軍配は石田三成率いる西軍に上がり、天下は再び豊臣のものとなる……はずだった。
三成はこれ以上の争いを避けるために天下を東軍の総大将である徳川家康に渡した。あろうことか最終的には東軍の勝利という形で関ヶ原の幕は下りた。
「高虎様。御用は。」
「明日中国の毛利の所へ行く。護衛につく者を何人か選んでおけ。」
「御意。」
用件が終わると忍は姿を消し、近くに人の気配がしないと確認した高虎は息をついた。
関ヶ原での戦いから1年。大阪城で戦後の方針が決まるや否や東軍の武将も西軍の武将も戦後処理に追われる日々が続いた。
「殿も人使いが荒い。裏でやることはこんな外様大名ではなくもっと信用のある奴にやらせるべきだ。」
忙しいのは高虎も例外ではなく、現在は西軍についた将へ秘密裏に支援を行うために密使として各地を回っている。今はようやく一仕事終えて久しぶりに自分の城に帰ってきた所だった。しかし、明日には中国の毛利に会いに行かねばならない。休んでいられない程の忙しさに苦笑しながらも、それだけ信用されているのだろうと無理矢理納得しそのまま横になった。天井を見上げているとずっと馬に乗り続けて疲れたのか、もう意識は半分夢の中に浸かっている。
「……もう、一年か。」
まどろむの中、頭に浮かんだのは馬鹿みたいに真っ直ぐでどこか人を惹き付ける瞳をした青年。あの絶望的な戦況から見事西軍を勝利へ導いた総大将。
彼も戦後処理のため全国を駆け巡っているらしい。見つけるのは困難だろう。
『俺は、最後までバカであることを貫く』
敵の大将である家康を討たず、刀を投げ捨て言った言葉。本当に心底バカな奴だと思った。しかし憂いと悲しみと不安と、確かな決意が宿った瞳を見た瞬間何か強烈な衝撃が走った。
今はもうその衝撃の意味はわかっている。それは、あいつを見る度に確信へと変わっていった。探すことはいつでも出来る。それをしないのは大きな不安と、小さな罪悪感。
混ざり合った感情は淡い恋心と共に遠のいていく意識に吸い込まれる。
「石田、三成……。」
夢を見た。
たぶんあんなことを考えていたからだろう。何故か目の前には求めて止まなかった姿があって……戦の時とは違う友好的な態度と笑顔。何か言っていた気がしたがほとんど頭に残っていない。
たとえ夢だとしても眼前に欲しいものがある。今度は、逃したりはしない。いてもたってもいられなくて、腕を掴むと思いっ切り引っ張った。そして抵抗する暇も与えずそのまま畳に押し倒す。
顔を見ると抵抗することも忘れてきょとんとしている。あんたは夢の中まで馬鹿面なのか?しかし、いつもと変わらない反応が返って心に余裕を与えた。
そして抵抗しないのをいいことに服に手をかける。そこで漸く状況を飲み込んだのか、逃げようと必死にもがき始めた。相変わらず鈍いな。そんなんでよく今まで無事でいられたものだ。
しかし力の差は歴然で簡単に押さえ付けて着物を開けさせる。細い体に白い肌。鎖骨に吸い付くと面白いぐらいに体がはねる。
「ど……して?」
恐怖からか涙声になっている。目にもうっすらと涙が膜を張って潤んでいる。このままぐちゃぐちゃに抱き倒したい。残っている理性が飛びそうになる。
「……だ。お前に惹かれたんだ。」
自分でも驚くくらい真剣な声音だった。当然相手も目を見開いたまま動かなくなっていた。
「…………好きだ。」
暫く待っても反応がない。まさか。不安になりながらも待っていると、少し顔が紅くなった。耳なんて火が出そうなほど赤い。
やがて意を決したように目を合わせると、押さえ付けていた手をするりと抜けて何か言いながら手を首に回された。
糸が切れる音がした―――
「ぁ。お、おはよう……ございます。」
「………は?」
目が覚めると何故か同じ布団に顔を赤らめた三成がいた。しかも裸。しかも自分も。
「あ、のとうど……殿。」
「ど、どうした?」
「ぇっと。い、いきなり気絶する程は……ない、と思います。」
「………………。」
まさか、あれは夢じゃ…………は?
結局毛利の所へ行くのは一日遅らせることになった。