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采配で高三です。
転生ネタです。
苦手な方はご注意ください。
よろしければつづきからどうぞ
「……好きだ。」
鳥の泣き声も聞こえない静かな屋敷の中。何の前触れもなく想いを告げた。
しかし、相手の反応は理想とは掛け離れていて。今まで笑顔を浮かべていた顔からは表情が消え、目は哀しみの色をたたえていた。
「藤堂殿、冗談は。」
「嘘でも何でもない。本気だ。」
真剣に訴えると相手も本気だとわかったのか、それ以上は何も言わずそのまま立ち上がり縁側に座った。じっと空を眺めている。
俺はその場から動かず、ただあいつの背を見ながら言葉を待っていた。
別にきっかけがあったわけじゃない。戦場で偶然見かけて、いつの間にか好きになっていた。
「………ごめん、なさい。」
ようやく相手から出た言葉はやはり理想とは違うものだった。俺はゆっくりと一回深呼吸する。
外を見ると、庭には今まで見たことない程大きな不思議な形の桜の木があった。それは幹の途中から二つに裂け、一本で二本の桜があるように見えた。桜は見事に咲き誇り、儚く散っている。
視線を戻すと相手も桜を見上げていた。部屋の中が薄暗いせいか、その背中は今にも光の中に消えてしまう、そんな感覚さえ起こさせた。
「今のあなたを慕うことはできない。」
「………何故?」
「あなたは大切な友人を、吉継を倒した。」
「…………。」
何も言えなかった。大谷吉継は敵だった。殺らなければ自分が殺られる。
こんな時代だから誰もが死を覚悟し、受け入れている。だからと言って自分が殺めた事実は変わりない。
「別に恨んでいるわけではありません。この乱世、仕方のないことだから。」
だから、二度と戦が起こらない時代を創る。
彼――三成は時代を諦め、時代に抗い、次代を創っていっている。
「友の命を奪った『いま』の俺はあなたを愛することはできない。その資格が、ない………。」
「え……?」
「だから、――――――。」
その声は僅かに震えていて、しかしはっきりと告げられた。
言葉の中から視えたのは、決意と
願い
「……約束する。必ず、果たす。」
ならば俺はその願いを約束に変えよう。
その時、風が吹き桜の木が揺れた。
より一層舞い落ちる桜の中、こちらを振り向いた三成は涙で頬を濡らしながら嬉しそうに微笑んでいた。
***
空は新たな始まりに相応しい雲一つない快晴だ。周りを見ると真新しい制服に身を包んだ生徒たちが不安と期待が織り混ざった表情で歩いている。
そして、そんな生徒たちを迎え入れるかのように立つ桜並木。桜たちは見事に咲き道を桃色に染めていた。
「また、春がきたな。」
あれから幾度この季節が廻ってきたのだろう。頭に浮かぶのはあの日交わした約束の言葉。
「必ず迎えに行く。」
その時、風が吹いた。花びらが風に乗って舞い上がる。それを目で追いかけると、細い脇道を見つけた。桜に導かれるように脇道を進んでいくと。
「!!」
その先には今まで見たことない程大きな桜の木。幹の途中から二つに裂けた不思議な形の桜。
その桜の木の下にはベンチに座る影が一つ。
その影に目を見開く。
服は違えど、姿形はあの日と全く同じもの。同じ光景。
気がついたら足はもう駆け出していた。
影がだんだん大きくなる。それに比例するかのように胸の鼓動も大きくなる。
そして、影が一つに重なった。
「……約束。果たしにきた。」
振り向いたその顔は涙で頬を濡らし、嬉しそうに笑っていた。
『だから、未来に……俺を迎えに来て。』