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采配の高三です
現代転生パロなので苦手な方は注意!
よろしければつづきからどうぞ
夏の日差しが照り付け、ジリジリとグラウンドを灼熱地獄へと変えていく。しかも今日は今年一番の暑さらしく、窓を見ると熱中症で倒れている部活生もいるようだ。
こんな暑い中、自分はクーラーの効いた教室で悠々と勉強している。申し訳なさを感じるが、あの中に混ざる勇気は一片も無い。
「三成?何ぼうっとしているんだ?」
「え、いえ!ちょっと考え事をしてただけです。」
「じゃあ早くこの英文を訳せ。一応学校に来てるからにはきっちり勉強してもらうぞ。」
「はい。すみません。」
今は夏休み。俺、石田三成は担任である藤堂高虎に特別講習を受けていた。古典や歴史は得意なのだが、外国語だけはちょっと苦手だ。
別に頗る成績が悪い訳ではない。でも苦手意識は早く克服したほうが良いと思い、英語の教員免許も持っている高虎に頼んでて講習を受けている。
「……あの、高虎殿。」
「ん?」
「ありがとうございます。夏休みまでこうやって勉強教えてもらって。」
「それが仕事だしなぁ。それに…今こうしてるだけでも、嬉しいからな。」
「!?」
突然見せた優しい表情に鼓動が早くなる。
「な、何を言っているんですか。あまり、からかわないで下さい…。」
顔が熱くなるのが感じる。照れ隠しに言ったこともどんどん墓穴を掘るばかりで、高虎の笑みが更に深まる。
「まさかお前が記憶を持ってるなんて思わなかったからな。」
「それはこっちも同じです。本当に、驚いたんですよ…。」
俺には前世の記憶がある。前世の俺は、戦国時代を生きた武将石田三成。関ヶ原の戦いで負けたとなっている西軍の総大将。
そして高虎は関ヶ原の戦い時、東軍に属していた武将藤堂高虎の生まれ変わり。
俺達は前世である約束をした。約束というか、俺がお願いしたが正しいけど。そしてその約束が果たされて、今ここにいる。
「でも、きっとこうして記憶を持っているのは貴方のお陰。」
「三成?」
『来世で迎えに来て下さい』
それは戦乱の世に翻弄され、自分に枷を嵌めてしまった前世の俺が未来に託した願い。
「貴方はあの願いを未来の約束に変えてくれた。」
一人ぼっちだった想いを一緒に背負ってくれた。
「しかも、貴方だけでなく吉継や左近、豊久殿にたま。皆に会えた。」
高虎は照れながらとしながらも真剣に話しを聞いている。それが何だか可笑しくてつい笑ってしまう。
「高虎殿が約束してくれたから、あの約束を忘れずに今ここにいる。」
生まれ変わって記憶を取り戻した時、本当に会えるのか不安になった。同じ時代に転生する保証もないし、たとえ奇跡的に会えたとしても向こうが約束を覚えているとは限らない。所詮は夢物語。そう思った時もあった。でも……
「……正直不安だった。」
「え?」
「本当にお前に会えるのか。会えたとしても、お前は約束を覚えているのだろうかって。」
「高虎殿…。」
高虎は拳を握りしめ、ほんの少しだけ震えている気がした。
「でも……砂粒ほどしかない確率を乗り越えれた。しかもお前が夢見た平和な時代に会えた。」
「………。」
「それはお前の、俺達皆の最後まで諦めない想いが叶えたんじゃないか?」
「……貴方から、そんな言葉が聞けるとは思わなかったです……。」
握り拳はいつの間にか解かれていた。変わったのは生きる時だけじゃない。描いた理想は幾年の時を越えて、緩やかに現実となっていく。
「高虎殿。」
「何だ?」
「これからも、ずっと一緒ですよ?」
「あぁ。」
俺が笑う。皆が笑う。そして、貴方が笑う。
新しい夢はまだ始まったばかり――――
「そういえばお前っていつ頃記憶思い出したんだ?」
「えっと……全てを思い出したのは幼稚園の頃ですね。」
「随分早いな。」
「実は、通っていた幼稚園の園長先生が秀吉様にそっくりだったんです!それで前世のことを思い出して。」
「………へぇ。秀吉公ねぇ。」
「でも、あの言葉は物心つく前から覚えていました。何故かわからないけど、この言葉は絶対に忘れたらいけないって思ってました。それだけ大切なものだって分かっていたんでしょうね。」
「!!………そうか。」
「耳、赤いですよ?」
「……にやけながら言うな。」
「ふふっ。」